コラム

2024.05.28
その他

企業内弁理士の業務

日本弁理士会四国会で、今年度、幹事をしております、岸本智久です。私は徳島県にある企業の知財部に所属しております。大学時代に特許関係に興味を持ち始め、某特許事務所で勤務した後、地元の企業の知財部に転職してきました。企業勤めしている途中に弁理士資格を取得し、はや17年が経過しました。

 

弁理士資格を保有しているのに企業勤めなの?弁護士や弁理士は、法律事務所や特許事務所で仕事するのが一般的では?と思われるかもしれません。私が弁理士試験を勉強していた20年程前は、弁理士試験を合格したら、数年内に企業勤めの人が特許事務所に転職するというのが多かったように記憶しています。数字的にも、約20年前の2003年当時、5,192人の総弁理士数に対し、企業内弁理士の割合は11.3%であったものが、2024年では、11,767人の総弁理士数に対し、企業内弁理士の割合は24.9%と、大幅に増えております。現在は、弁理士試験に合格しても特許事務所に転職せずに、企業勤めを継続している人が増えているそうです。その理由は様々ですが、2003年に約42万件あった特許出願件数が2022年では約29万件へと大幅に減少し、特許事務所の仕事量が減ってしまったり、特許事務所と企業との給与面の差が小さくなってしまったりしているのが原因の一つのように言われています。

 

では、企業内弁理士ってどんな仕事をしているの?これについては、2023年にTV放映された「それってパクリじゃないですか?」をご覧頂くとご理解し易いように思います。このドラマは、会社の知財部に配属された新米知財部員のお仕事の様子が描かれており、非常に話題になりました。ドラマの中で描かれていたように、企業の知財部では、特許や意匠、商標などを出願する権利化業務の他、他社の特許を侵害していないかを調査・確認する他社対策業務や、共同開発や共同出願などの契約全般を扱う契約業務、国内外の係争・訴訟を対応する係争・訴訟業務、企業の知財方針を立案する知財戦略立案業務など、多種多様な業務を行うことが多いです。

 

企業内弁理士の魅力って何?これは個人的な意見ですが、権利化業務だけでなく、弁理士という知財の専門家として、企業の経営戦略、事業戦略に貢献すべく、研究開発戦略とも連携し、知財戦略を立案し、組織を動かし、知財経営を実現することに取り組めるという点にあるように思います。

 

特許事務所所属の弁理士と企業内弁理士、立場は違っても、知財を扱う専門家として、知財の利活用を積極的に行い、日本の産業の活性化ならびに日本弁理士会全体の発展に貢献していきたいと切に願い、日々の業務に精進していきたいと思っております。

 

日本弁理士会四国会 弁理士(特定侵害訴訟業務付記)

岸本智久