四国の知財状況
日本弁理士会四国会の総務人事委員会・委員長の相原正です。愛媛県松山市にて特許事務所を開業して20年近くになります。今回は、産業財産権(特許、実用新案、意匠、商標)の統計データをほんの一部ですが紹介させて頂きます。
特許庁では、毎年、特許行政年次報告書というものを発行しており、知的財産をめぐる国内外の動向と特許庁の取組について紹介しております。少し古いのですが、2023年7月に2023年版が発行されております。
まず、2022年の日本国特許庁への出願件数(概算)は、下記の通りです。
・特許出願 29万件弱
・実用新案出願 4,500件
・意匠出願 3万件強
・商標出願 17万件強
特許出願はここ10年で1割以上、4万件近く減少し、実用新案出願はここ10年で3千件程度減少しております。一方、意匠出願は、ここ10年は横ばいで推移し、商標出願は、10年前の12万件から2017年に19万件まで増加し、その後は横ばいか微減傾向にあります。これらの数字には、日本企業による出願と海外企業による出願の双方が含まれます。
一方、日本企業による海外への出願件数の指標となる国際出願の件数についてみると、下記の通りです。
・国際特許出願(PCT) ここ10年で4万件強から5万件程度に増加
・国際意匠出願(ハーグ) 2022年に1千件弱でここ5年は微減傾向
・国際商標出願(マドプロ) ここ5年、3千件強で横ばい
これらのことより、日本企業は、国内の特許・実用新案・意匠の出願を減らしつつ、商標出願については、少し増やし、海外出願については、横ばいの状況にあると言えます。
これに対して、データの紹介は割愛しますが、海外の企業による日本国特許庁への出願は、ここ5年、総じて増加傾向にあるようです。このことは、日本企業の国際競争力が年々低下していることの表れかもしれません。
また、海外の特許庁における特許及び商標の出願件数は、2021年のデータとなりますが、下記の通りです。
・米国 特許60万弱、商標67万件弱
・中国 特許160万件弱、商標945万件
・欧州 特許19万件弱、20万件弱
・韓国 特許24万件弱、商標28万件強
中国は桁違いに多いですが、急増したのは2010年以降であり、2001年に40万件のピークを迎えてから長期的に減少を続けている日本とは正反対の動きとなっています。ただ、経済規模で考えてみても、日本の出願は相対的に少ないのではないかと思われます。
次に四国の県別の出願状況について紹介します。2022年のデータですが、特許及び商標に関して、下記の通りです。
・徳島県 特許627件、商標319件
・香川県 特許297件、商標501件
・愛媛県 特許1,602件、商標690件
・高知県 特許119件、商標260件
特許に関して、徳島県及び愛媛県の件数が相対的に多いのは、特許出願件数の多い大手上場メーカーの本社があるからと考えられます。
四国の知財状況については、四国経済産業局のホームページ「データで見る四国の知財状況」にもグラフ付きで分かり易く詳細に紹介されております。
https://www.shikoku.meti.go.jp/chizai/tamatebako_1.html#002
以上、統計データのほんの一部を紹介させて頂きましたが、公開情報である知的財産情報を分析して、その結果を経営戦略の策定や企業の意思決定に活用するIPランドスケープが近年注目されてきております。
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日本弁理士会四国会 総務人事委員会・委員長 相原正