コラム

2024.09.12
特許

忘れられない言葉

高松の京和特許事務所(https://www.kyowapat.com/)弁理士の京和です。私は、香川の機械メーカーで移動式クレーンの開発設計をした後、特許課に異動になり定年+1年勤務しました。その後は弁理士業に専念しています。発明者、知財担当、弁理士の3者全て経験したことになります。
知財に深く関わり始めて、早くも30年になります。その間で忘れられない言葉がいくつかあります。本日は、その言葉をご紹介しましょう。

 

●特許戦略の目的は事業利益の最大化である。
会社勤め最終に知財マネージャーとなり、自社の特許戦略がどうあるべきか、あれこれ頭を悩ましていました。そのとき、出会った本に書かれていた言葉です。
本の名称は「御社の特許戦略がダメな理由」、著者は元三菱化学株式会社理事、知的財産部長の長谷川 曉司氏、出版社は中経出版です。
この言葉に出会い、「そうなんだ。事業利益の最大化を目指せばいいんだ。」と腹にストンと落ちた気がしました。
この言葉からは、知財関係者は常に高い視点から事業戦略と開発戦略を深く理解し、それに沿った知財の発掘・権利化・活用等の知財活動すべきことが導かれます。

 

●完全な明細書は無い。
特許事務所を始める前に、大阪での弁理士育成塾に2週に1回全20回通い、明細書作成を学び直しました。その時の講師の原田洋平先生から講義中にお伺いした言葉です。
私達弁理士はどんなに複雑・難解な発明であっても、依頼があれば明細書に仕上げます。このとき、少しでも完全な明細書に近づける努力をし、依頼者の期待に応えようとします。
しかし、完全な明細書を目指すあまりに悩み、いつまでも立ち止まっていてはあっという間に納期が来ます。
このぎりぎりの葛藤のなかでの弁理士の心構えとして貴重な言葉だと心に響きました。2000通以上の明細書を書いてこられた原田先生ならではのお言葉と感じております。

 

●開発が新しいことせんようになったら終わりやで。
技術系役員の方が話されていたのを、近くで耳にした言葉です。
開発(発明者)が技術開発に果敢にチャレンジして発明が生まれてこそ、それを明細書に仕上げ特許が生まれます。一方、知財担当と弁理士は技術開発を直接の業務としていません。そこで、我々は、知財情報の提供、先行技術調査、発明発掘、代替技術の提案等々により開発(発明者)及びクライアントが新しいことに挑戦するための支援をしていきたいものです。

 

日本弁理士会四国会 弁理士(特定侵害訴訟業務付記)  京和 尚(きょうわ たかし)