コラム

2025.01.10
特許

特許と囲碁

 日本弁理士会四国会の会員、西内盛二です。私は高知生まれの高知育ちで、高知大学の修士課程を修了後、香川の化学メーカーで研究開発に従事していました。その際に学んだのが、「特許」と「囲碁」でした。特許については、開発していた材料について、上司からの指示でパテントマップを作成することになり勉強を始めました。囲碁については、夜間の実験の空き時間に上司に教えてもらったのがきっかけです。
 
 皆さんは、「特許」と聞いて、どんなイメージをお持ちでしょうか?私は、「特許」は「囲碁」と同じように「陣取りゲーム」だと考えています。つまり、特許権(石)で参入障壁を作り、競合他社の自由な事業活動や研究開発をいかに効果的に妨害し、牽制するかというゲームだと考えています。特許が難しそうだと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、陣取りゲームだと考えると、面白いと感じる方も多いのではないでしょうか?確かに、出願手続きや特許権侵害の判断には専門的な知識が必要ですが、これらについては私たち弁理士がサポートできます。しかし、特許のゲームに勝つためには、専門知識だけでは不十分で、心理的な要素が非常に重要です。囲碁では、対戦相手が打ってきた無理筋(理屈に合わない無理な手順や指し手)を厳しく咎めることが求められます。特許でも同様に、競合相手が自社の特許権を侵害した場合、厳しくその行為を咎めなければなりません。しかし、特許権の侵害行為は判断が難しく、多額の費用がかかるため、企業の経営者や知財担当者には大きな心理的負担がかかります。その際、心理的負担に負けずに特許権侵害行為を厳しく咎められなければ、防衛線を突破され、企業の事業活動に不利を生じさせる可能性があります。
 
 また、囲碁は「戦争ゲーム」に例えられることがありますが、実際の戦争では、「諜報活動」や「兵站」が非常に重要です。特許分野においても、諜報活動に相当するものとして、近年「IPランドスケープ」という取り組みが広がりを見せています。IPランドスケープは、特許などの知的財産情報を経営・事業情報と組み合わせて分析し、経営者や事業責任者と共有し、活用する取り組みです。一方、特許分野における兵站活動は、取り立てて話題にされることは少なく目立たない活動ですが、特許のゲームにおいても非常に重要です。兵站の要諦は、「必要なものを」「必要な時に」「必要な量を」「必要な場所に」供給することです。クライアントが競合他社との競争に勝つためには、「必要な知財を」「必要な時に」「必要な量を」「必要な事業分野に」供給することが、私たち弁理士にとっても非常に重要だと考えています。
 
 本稿を通じて特許や知財に興味を持たれた方は、ぜひ日本弁理士会四国会が主催するセミナーや関連する活動にご参加ください。知財を活用することで、地域経済の発展や企業の競争力向上に貢献できることを心より願っております。

 

日本弁理士会四国会 弁理士 西内盛二